サミット会場・洞爺湖と有珠山 その2

昨日の記事の中に有珠山についての記述がありました。今日はその続きを書きたいと思います。


有珠山の最新の噴火は2000年(平成12年)でした。この2000年の噴火では噴火の前日に、避難対象地区の住民10545人が避難を完了していたことで死傷者は出ませんでした。これは有珠山が火山であることを地域の住民の方々が正しく認識と理解をしていたことで噴火予知が成功したといえます。


2000年の有珠山の噴火はマグマ水蒸気爆発でした。マグマ水蒸気爆発は水蒸気爆発よりも爆発力が大きくなります。もし、住民の避難が遅れていたら多くの犠牲者が出ていたかもわかりません。死傷者が出なかったのは北海道大学岡田弘教授が有珠山ホームドクターとして予知と防災に活躍されたからだと思います。


有珠山の噴火からの災害復興では興味ある試みがあります。それはエコミュージアムとよばれるものです。エコミュージアムのエコとはエコロジー(生態学)に由来します。つまり自然の持っている生態系を考えた環境にやさしい博物館です。


有珠山の周辺では噴火の際にできた国道を横切る地割れや山麓の噴火口などを自然そのままに保存しています。壊れた洞爺湖温泉街の建物もそのまま残してしまおうという案も出ています。そして、散策路や交通連絡網で周辺の遺構を結んで地域を丸ごと博物館にしてしまう新しいタイプの野外博物館が洞爺湖周辺地域のエコミュージアム構想です。


有珠山の2000年噴火では、日頃から有珠山が火山であることを理解して防災教育に取り組んだ結果、噴火時の減災に成功しています。過去の火山遺構を保存することは人と火山の共生の歴史を保存することになります。そして、温泉やエコミュージアムに観光客が訪れることは産業の創出にもつながり、地域の人々が火山の恵みを受けることにもなります。