水溶液の性質02 中和は化学反応式で②

つぎに、塩酸が多い場合はどうなるのかを考えます。
5HCl+2NaOH → 2NaCl+2H2O+3HCl
と式を書いてみます。この反応式では水酸化ナトリウムは全部塩酸と中和するのに使われています。塩酸の一部は中和していますが、すべての塩酸を中和できたわけではありません。5HClのうちの2HClつまり、5個の塩酸のうち2個が中和に使われたことがわかります。


反応後の水溶液には、2NaCl、2H2O、3HClつまり食塩2個、水2個、塩酸3個が含まれていることがわかります。まだ塩酸があるので反応後の水溶液は酸性です。そして、水分を蒸発させると、塩酸は溶けている気体の塩化水素が蒸発してしまうので食塩が結晶として残ります。


最後に、水酸化ナトリウム水溶液が多い場合はどうなるのかを考えます。
3HCl+7NaOH → 3NaCl+3H2O+4NaOH
と式を書いてみます。この反応式では塩酸がすべて水酸化ナトリウムと中和するのに使われています。水酸化ナトリウムの一部は中和していますが、すべての水酸化ナトリウムが中和できたわけではありません。7NaOHのうちの3NaOHつまり、7個の水酸化ナトリウムのうち3個が中和に使われたことがわかります。
反応後の水溶液には、3NaCl、3H2O、4NaOH、つまり食塩3個、水3個、水酸化ナトリウム4個が含まれています。水酸化ナトリウムが水溶液中にあるので、反応後の水溶液はアルカリ性です。そして、水分を蒸発させると、そして、水分を蒸発させると、食塩と水酸化ナトリウムが結晶として残ります。


中和の問題がわからない子は、中和しているのに反応後の水溶液が酸性だったり、アルカリ性だったりすることがイメージできていません。だからいつも中和の問題が出題されると、できた水溶液の性質や残る固体を勘で書いて、当たったときは「今回はできた!」と喜び、はずれるときは「いつもできるけど、今回は難しかった」なんてことになっています。
でも、水溶液の中の塩酸と水酸化ナトリウムが1:1で中和し、その比が3:1なら塩酸2が和できずに残り、3:7なら水酸化ナトリウム4が中和できずに残ることがイメージできれば問題はスラスラ解けます。そして、みんなが苦手にしている化学分野の中和が得意な受験生へと変身できます。


ところで、サミットで一躍有名になり、今年度の入試には時事問題として出題される可能性が高い洞爺湖温泉。その近くには昭和30年代まで操業していた硫黄鉱山かありました。その硫黄鉱山からは硫黄分を含んだ鉱山廃水がそのまま洞爺湖に垂れ流しにされていました。


湖に流れ込んだ鉱山廃水は酸化して中性の湖水を酸性の湖水にしてしまい、一時は生物の住めない死の湖となりました。しかし、1977年(昭和52年)に洞爺湖のそばにある有珠山が大噴火をして、大量の火山灰を洞爺湖に降らせました。アルカリ性の火山灰が酸性の湖を中和し、洞爺湖は再び生き物の住める湖に復活しました。人間が汚した自然環境を火山の噴火が蘇らせたのです。


明日から近畿圏では中学入試が始まります。
受験生のみんなガンバレ!!