ゆとり教育と中学受験

今年の大学受験の結果を見て、公立高校復活!という話がインターエデュ掲示板などにのっています。実はKissieは15年以上塾の先生をしています。もちろんゆとり教育の結果、今の小学生・中学生がどのような状態になっているかも保護者の方より知っているつもりです。ですから公立高校復活!という言葉が怖いのです。特に今の中学3年生以下の子どもが大変なことになっています。

ゆとり教育が本格的になったのが学習指導要領の改正が施行された2002年度(平成14年度)以降です。ちょうど今の中学3年生が小学3年生だったときです。今までなら小学校3年の算数では計算練習をたくさんしていました。ですので計算力はほとんどの小学生がシッカリしたものを持っていました。しかし、学習指導要領の改正以後はそれがなくなってきています。つまり計算力が弱いので問題が解けない子どもが増えてきているといことです。これは子どもの能力が低下しているわけではありません。鍛えればできるようになる子どもがほとんどです。学校の先生の指導力に問題があるわけでもありません。問題があるのは学習指導要領だと思います。

塾の先生(Kissieはモチロン理系の先生です)の実感としては年々計算力と共に文章読解力が低下しているように感じます。計算力と文章読解力が低いので算数、理科の成績が伸びない子が多いのです。また、受験を始めるために塾に通い出す学年もそれに伴って下がってきて、今は小学3年生ぐらいからが主流になりつつあります。では3年生の1年間で何をするかというと、計算力と文章を読む、書くの基本を繰り返します。そうです、今までは学校だけでキチンとできていたことです。4年生になる頃には明らかに違いが現れてきます。

今の小学生は周りが鍛えられていない分、少し頑張れば簡単に結果が出ます。そういう意味ではゆとり教育は頑張る子にはやさしい環境を提供してくれています。
中学受験を視野に入れれば勉強をしなければいけないので5年生ぐらいになれば小学校では良くできる子になります。子ども自身の『まわりの子よりできる』という実感とまわりの子の『あの子はできる』という目が子どもの自信につながります。
子どもは自信がつけば自分からいろいろな事にチャレンジするようになります。新しい事にいろいろチャレンジするので失敗もしますが、その失敗が経験となりそこから工夫が生まれます。これを日常生活のいろいろな場面で繰り返すことにより経験値も上がり、同時に問題解決能力も高まります。そして明るく積極的な子どもに育ちます。

ゆとり教育が見直されて、実際に子どもの学力が元の状態になるのはまだまだ先だと思います。それまでは緩やかに子どもの学力が下がっていくでしょう。勿論、本格的なゆとり教育を受けた子どもたちが大学受験をする4年後からは公立高校の大学進学実績がどうなるか?は誰にもわかりません。また、ここに書いたことが日本全国の小学生にあてはまるものでもありません。ただ、ある塾の先生がいる現場で実際に起こっていることの感想というだけです。