マイナスイオンと疑似科学?

先日、実家へ帰ると『これマイナスイオンが出て身体にエエねん!』とKissieの父親(四捨五入して70歳)が自慢げに最近買ったある電化製品を見せるんです。『いまさらマイナスイオンかよ(泣)』という息子の立場はいったん置いといて、老人はまだまだ簡単に騙せるということを再認識しました。このような状況は科学を志すモノとしては黙ってはいられないので、今日はマイナスイオンをカガクしてみたいと思います。


そもそもマイナスイオンとは何?から考えていきたいと思います。


マイナスイオン』という言葉は自然科学の中にはありません。実はマイナスイオン和製英語であり、海外では通用しません。マイナスイオンの定義というものが存在しないのです。それでもマイナスイオンっぽいイメージのイオンは何?といわれると陰イオンぐらいしか思い浮かびません。

そこで、陰イオンは何?ということから考えていきたいと思います。物質はすべて原子からできています。原子は電気的に+(プラス)の原子核と電気的に−(マイナス)の電子でできています。この原子にもいろいろな性質のものがあって、電子をあげたいもの、もらいたいもの、あげる・もらうをしたくないものがあります。そして、電子をくれる原子から電子をもらって−(マイナス)になってしまったものが陰イオンです。


身近な陰イオンを少し紹介しましょう。
塩化物イオン(Cl−)
食塩に含まれる陰イオンです。塩化物イオンとの化合物は水に溶けるものが多く、金属の腐食をすすめます。なんか身体にいいイメージはないですね。


水酸化物イオン(OH−)
金属イオンなどいろいろな陽イオンと化合物をつくります。化合物の例として水酸化ナトリウム(NaOH)や水酸化カリウム(KOH)などがあります。そういえば、水酸化ナトリウムも水酸化カリウムも強アルカリです。そしてどちらもタンパク質に対して強い腐食性を持ちます。カンタンにいうと皮膚が溶けるということです。健康によくないですね。


以前、TVでうちの師匠が紹介していたこともある火山がつくる金属が溶ける湖の原因である硫酸イオン(上付き文字、下付き文字が使えないので、式で書くとSO42―と何が何かわからなくなってしまうので許してください。),地球温暖化の原因とウワサされている二酸化炭素が水に溶けてできる炭酸イオンなどまだまだありますが、どれも健康にはよくなさそうです。


ここまで考えると陰イオンとマイナスイオンはまったく関係がないことがわかります。そしてマイナスイオンの正体も不明のままです。


次にマイナスイオンの効果と発生方法から考えてみたいと思います。
マイナスイオンの効果いうと最近では除菌効果が主流のようです。そしてマイナスイオンの発生方法は放電、細かい水しぶきを霧状に撒く、トルマリンなどの石を使うなどの方法があるようです。


放電でマイナスイオンを発生させる方法。わざわざ放電してマイナスイオンに働いてもらうよりも直接菌に放電したほうが除菌効果が高いような気がしますがいかがでしょう。


細かい水しぶきによるマイナスイオン発生法。滝の近くに行くとスッキリさわやかなのはマイナスイオンのおかげというアレです。ただ単に水が蒸発して温度が下がっているような気がするのは私だけ? この説で考えると、打ち水をするとひんやりするのもマイナスイオンのお陰になります。
基本的に水のあるところには菌がいる場合がほとんどです。しかもそれをまき散らす。あっ!でもマイナスイオンで除菌しているからOKって菌が死ぬってことは人体にも影響あるんじゃないの?


トルマリンなどの石を置いておくとマイナスイオンが発生する方法。石はもともと土の中にあります。置いておくだけで除菌するならモチロン土の中でも除菌していたはず。トルマリンはケイ酸塩鉱物です。できるまでに時間がかかります。そう、何千年、何万年、何十万年もかかります。できたあとに人間の手に届くまでにも何万年、何十万年、何億年かかっているかもしれません。その間も人知れず除菌しまくるトルマリン。人類が地球上に現れる遥か以前から除菌しまくるトルマリン。でも地球上から微生物はいなくなりません。微生物とトルマリンのいたちごっこは地球上にイタチが現れるより遥か昔から始まっていたのでした。


考えれば考えるほど?が増えていきます。
それでもアナタは、こんな楽しいマイナスイオンを信じますか?